人間・稲津久

北海道の魅力を全国にアピール

 あるとき、米農家の悲鳴を聞いた。「なぜ、北海道米は価格が安いのか」
長年、安くてまずいといわれてきた道産米だが、様々な品種改良の結果、全国的にも「うまい米」となった。しかしその人気は、本州の米にかなわない。「どうして道産米は売れないのか」と、稲津は調査を開始。すると、北海道の米のおいしさを道民が理解していなかったという思わぬ結果が出た。本州では七割以上が地元の米を食している中、北海道では道産米を食しているのは六割に満たなかったのだ。
 そこで農家の仲間と一緒に、全道各地で「道産米を食べよう会」を開催。道産米と他県産の米を食べ比べることで道産米のおいしさをアピールし続けてきた。同じ頃、「米チェン!」のキャッチコピーで、道産米のおいしさを訴えるCMも流れはじめ、一気に道内での道産米の消費量が増加。今では、東京の高級寿司店で使われるほどの人気で、「空知は米どころ」と有名になった。

 道議会議員三期連続トップ当選という数字に表れているとおり、稲津の信頼感は絶大だ。稲津とともに「道産米を食べよう会」を運営した、山本英幸(きらきらぼし生産組合組合長)はその理由を語る。
「稲津さんに声をかけると、その場ですぐに対応してくれる。そして、必ずその結果を伝えてくれる。『道産米を食べよう会』でも、忙しい中でも、一緒に取り組んでくれました。こんな身近な議員は見たことがありません。単純なことですが、その行動から彼の真摯な人間性を感じているのは私だけじゃないと思います」
その信頼感と大きな期待から、二〇〇九年八月、稲津は衆議院議員選挙へ挑戦。当選後は、地方議員出身の国会議員として、「いちばん近くで声を聞き、動く、働く」をモットーに、精力的に仕事を重ねてきた。
二〇一〇年三月、札幌市のグループホームで火災が発生し、七人もの高齢者が亡くなった。「スプリンクラーさえついていれば、延焼は防げたはずだ」。稲津が調査を開始すると、設置義務のない施設には九割以上にスプリンクラーがついていなかった。二五〇平方㍍以下の小規模グループホームには、施設設備の補助金がつかなかったのだ。すぐに委員会質疑で取り上げ、設置補助を要請。わずか三カ月後の六月に、一〇〇〇あるグループホームへのスプリンクラー補助が実現した。
また東日本大震災を受け、新しいエネルギー問題が脚光を浴びているが、炭鉱町生まれの稲津は、石炭の必要性と新たな可能性を訴える。

 北海道の空知管内にある七つの露天掘り炭鉱では、今でも年間六〇万㌧の石炭が生産されている。釧路のコールマイン(地下を掘り進む坑内掘りの炭鉱)でも毎年五、六十万㌧の石炭が採取されている。現在、日本の火力発電の二五㌫は石炭を利用。稲津は、日本が世界最高水準を誇る、CO2を排出しない石炭火力発電技術の、さらなる整備を進めようと考えている。
衆議院議員一期目の稲津にとって、やりたい仕事はまだまだ山ほどある。医療・福祉政策の充実はもちろん、自然、景観、人、そして、エネルギー政策と、ポテンシャルの高い北海道は日本の希望だ。
稲津は熱く語る。
「政治家には『責任を取る』という信念がなければいけません。地域に密着して現場の声を聞きながら、やるべき仕事に責任をもっていく姿勢が大事です。北海道には素晴らしい観光資源があります。農業や漁業、炭鉱業といった一次産業の生産基盤も整っている。こんなに素晴らしい地域はほかにはありませんし、この北海道の魅力を全国・世界にアピールしていくのが私の責任です」   
(月刊『潮』2月号より転載)